Codex Record & Replayとは?録画1回で業務を自動化する
毎月やっているのに、自動化するほどじゃない。でも手間はかかる。そんな「中間の業務」が、どこの職場にも必ずあります。
- 月次の経費精算をシステムに打ち込む
- 定期レポートをダウンロードして保存する
- 社内SaaSでの申請フォームを毎回埋める
これらは難しくないが、毎回やるのは面倒です。プログラムを書けるほどでもない。そういう業務が積み重なって時間を奪っています。
Codex Record & Replayとは、Macでの操作を録画してAIに見せるだけで、その作業を「スキル」として保存・再実行できる機能です。
プロンプトを書く必要はありません。スクリプトを組む必要もありません。やって見せるだけで、AIが次回から代わりに実行します。
この記事では、AIツールを業務効率化に活用する立場から、Record & Replayの仕組み・使い方・活用事例・注意点を解説します。
具体的には
- Record & Replayの仕組みとSKILL.mdの役割
- 従来のRPA・マクロとの違い
- チームでのスキル共有と業務継承への活用
の順番でご紹介します。
Codex Record & Replayとは?
Codex Record & Replayは、OpenAIのCodexアプリ(macOS)に搭載された機能で、ユーザーの操作を録画してAIが「スキル(Skill)」として保存・再実行できるようにするものです。
2026年6月18日にリリースされました。現時点ではmacOSのみ対応です。
従来の自動化との根本的な違い
これまでの業務自動化には大きく2つのアプローチがありました。
1. マクロ・RPA(座標ベースの再生)
決まった画面座標をクリックする手順を記録して再生します。ただし、画面レイアウトが変わったり、ファイル名が変わったりすると、同じ座標をクリックしても動かなくなります。環境変化に弱いのが弱点です。
2. スクリプト・プログラミング(コードベース)
Pythonなどで自動化スクリプトを書きます。柔軟性は高いですが、コードを書ける人が必要です。非エンジニアには敷居が高いです。
Record & Replayはこの両方の弱点を解消しようとしています。
CodexのLLMが録画から作業の目的・手順・入力値・完了条件を読み取ります。それをSKILL.mdとして保存します。
再実行時は、LLMが「スキルの意図」を読んで今の環境に合わせて実行します。ファイル名が変わっても、日付が変わっても、意図が変わらなければ対応できます。
Record & Replayの仕組み
録画→SKILL.md自動生成→Computer Use実行、という3段階で動きます。各ステップを順に解説します。
録画から再実行までの流れ
STEP 1:録画開始
CodexアプリでRecord & Replayを起動します。ゴール(何をしたいか)と変動する入力値を伝えます。
STEP 2:操作を実演する
普通に作業します。Codexが画面の内容と操作を観察します。1セッション最大30分の録画が可能です。
STEP 3:スキルの生成
録画終了後、CodexのLLMが記録した内容を解析します。以下の4要素を自動で整理してSKILL.mdファイルに書き出します。
- いつ使うか(このスキルを呼び出すべき条件)
- 何を入力するか(変動する値・ユーザーが指定すべき情報)
- どんな手順か(実行ステップ)
- どう完了を確認するか(成功の判定基準)
STEP 4:スキルとして保存・共有
生成されたSKILL.mdは人間が読める形式のドキュメントです。内容を確認・編集できます。チームメンバーと共有することで、1人が録画したスキルを部署全員で使えます。
STEP 5:再実行
「あの経費精算のスキルを実行して」と指示するだけで、CodexがComputer Useを使ってPC上で作業を代行します。
SKILL.mdとは何か
Record & Replayの核心は、操作を「言語化されたドキュメント」として保存する点です。
SKILL.mdは人間が読めるMarkdownファイルです。中身を確認して、命名規則・デフォルト値・判断基準といった細かい指示を後から追記できます。
録画時に言えなかった暗黙の前提を、編集で補完できます。スクリプトやマクロにはない特徴です。
Computer Useとの関係
Record & Replayは、実行時にComputer Useという機能を使います。
Computer Useとは、AIがMacの画面を「見て」マウス・キーボードを操作する機能です。
Record & Replayが「何をするか」を定義して、Computer Useが「実際に操作する」という役割分担です。Record & ReplayはComputer Useが有効になっていないと使えません。
この2つがセットで機能することで、「AIが代わりにMacを操作して作業を完了する」体験が実現します。
Record & Replayで自動化できること
繰り返し頻度が高く、手順が決まっている定型業務が最適です。経費精算・レポートDL・申請フォーム入力が代表例です。
向いている業務の特徴
Record & Replayが得意なのは、次の条件を満たす業務です。
- 手順が決まっていて、毎回ほぼ同じ流れになる
- 複数のアプリ・ページをまたぐ
- 人間が「面倒だけど難しくはない」と感じる作業
- 繰り返し発生する(週次・月次・日次など)
- コードを書くほどではないが、手作業では時間がかかる
具体的な活用事例
経費精算の自動化
月末に社内の経費精算システムにログインし、レシートの情報を入力して申請ボタンを押す。この流れを録画すると、翌月から「経費精算して」と指示するだけで完了します。
リリース後、Xで「毎月の経費精算、もう自分でやらなくていい」という投稿が1.2万いいねを集めました。多くの人がこの業務の繰り返しを感じていた証拠です。
定期レポートのダウンロードと整理
アクセス解析ツールやCRMから毎週レポートをダウンロードして、決まったフォルダに保存するという作業。複数ツールをまたぐため手間がかかりますが、Record & Replayで一度録画すれば自動化できます。
社内SaaSの設定変更・申請
新しいメンバーのアカウント作成、権限設定の変更、備品申請フォームへの入力など。手順は決まっているが、毎回やるのが面倒な作業に向いています。
休暇・申請フォームの提出
社内ポータルへのログイン、フォームへの入力、送信確認。これを録画しておけば次回から指示一つで完了します。
最初に選ぶなら、「ログインして特定のデータをダウンロードする」といった5〜10ステップの作業が向いています。複雑な判断が入るより、手順が固定されている作業から始めると精度を確かめやすいです。
Record & Replayの使い方
macOSとPlus($20/月)以上が前提条件です。Computer Useを有効化して、最初は5〜10ステップの単純な作業で試すのが近道です。
利用条件
Record & Replayを使うには以下が必要です。
- 対応OS:macOSのみ(Windowsは現時点で非対応)
- 有料プランが必要: Plus($20/月)、Pro($200/月)、Business・Enterprise・Eduのいずれか
- Computer Useの有効化: 設定でComputer Useをオンにする必要がある
- 地域制限: EEA(EU加盟国)・イギリス・スイスは現時点で利用不可
録画時の注意点
録画前に準備すること
録画を始める前に、CodexにゴールとVariableInputs(毎回変わる値)を伝えます。
例:「月次の売上レポートをダウンロードして、Reportsフォルダに保存するスキルを作ります。変動する値は対象月です」
この前置きを入れることで、Codexがスキル生成時に「どこが固定でどこが変動するか」を正確に識別できます。
録画中のポイント
- 実際の業務通りに操作する(デモ用のダミーデータを使う場合はその旨を伝える)
- 機密情報・パスワードは入力しない(スキルに記録される可能性がある)
- 迷わずスムーズに操作する(判断に迷う部分はあとでSKILL.mdに追記する)
録画後にすること
生成されたSKILL.mdを確認します。「命名規則はこうして」「このフィールドはデフォルトのままで」といった暗黙の前提を追記します。一度精度を高めておくと、以降の実行精度が上がります。
スキルの共有方法
SKILL.mdはファイルとして保存されます。チームのメンバーに共有することで、一人が録画したスキルを部署全員が使えるようになります。
「ベテランの業務ノウハウをスキルとして配布する」という使い方が企業ユースとして注目されています。新人が入ってきたとき、口頭で教える代わりにスキルを渡す、という運用が可能になります。
Record & Replayが変える「ナレッジの継承」
ベテランが1回録画するだけで、暗黙知がSKILL.mdとして言語化されチームに配布できます。「属人化した業務手順」をスキルとして抽出・共有する仕組みです。
暗黙知をスキルに変換する
職場には「この作業、あの人に聞けばわかる」という暗黙知が必ず存在します。長年勤めているメンバーが持つ、細かい手順や判断基準。これは言語化されていないため、引き継ぎが難しく、その人が休んだり退職したりすると業務が止まります。
Record & Replayはこの問題への一つのアプローチです。
ベテランが実際の操作を1回録画するだけで、SKILL.mdとして言語化されます。「デフォルト値のまま」「この命名規則で」といった暗黙の前提は、録画後にSKILL.mdに追記できます。
結果として、暗黙知がドキュメントとしてチームに共有されます。
チームへの展開フロー
Record & Replayをチームで活用する場合の流れを整理します。
1. 業務の棚卸し
チーム内で繰り返し発生している手作業を洗い出します。「月次・週次で同じ手順を踏んでいる作業」「複数人が個別にやっている作業」が候補です。
2. 録画担当者を決める
その業務を最もよく知っているメンバーが録画を担当します。「誰かが一度録画すれば全員が使える」というのがRecord & Replayの設計思想です。
3. スキルの精度を上げる
録画後に生成されたSKILL.mdを確認し、暗黙の前提を追記します。「このボタンはデフォルトのままにする」「送信前に金額を確認する」といった判断ポイントを言語化します。
4. チームへの配布
完成したSKILL.mdをチームに共有します。これを使えば、誰でも同じスキルをCodexに実行させられます。
5. 継続的なアップデート
業務フローが変わったら録画をやり直します。または、SKILL.mdを直接編集してアップデートします。
「属人化」から「スキル化」へ
日本のオフィスワークには、特定の人だけが知っている手順が多く存在します。これは生産性の損失であり、引き継ぎコストの原因でもあります。
Record & Replayは属人化した業務手順をスキルとして抽出・共有する仕組みです。精度は100%ではなく、複雑な業務・例外処理が多い場合は人間のレビューが必要です。「スキル化できる業務の選別」と「定期的な精度確認」がチーム導入の現実的な運用です。
Record & Replayと従来ツールの比較
| 比較項目 | Record & Replay | RPAツール | Pythonスクリプト |
|---|---|---|---|
| 技術スキル不要 | ◎(録画するだけ) | △(設定が複雑) | ✗(コーディング必要) |
| 環境変化への対応 | ○(LLMが意図を解釈) | ✗(座標変化で壊れる) | △(コード修正が必要) |
| 設定の手間 | 少ない | 多い | 多い |
| 対応できる複雑さ | 中程度まで | 高い(設定次第) | 高い |
| 共有・再利用 | ◎(ファイル共有) | △(環境依存) | ○(コード共有) |
| 対応OS | macOSのみ | Windows/Mac | 問わない |
| コスト | Plus $20/月〜 | 高額が多い | 開発コストのみ |
Record & Replayは「ノーコードでできる範囲を広げる」ツールです。RPAやスクリプトほどの複雑な自動化はできません。日常の繰り返し作業を最も手軽に自動化できる点が強みです。
海外での反応・事例
Record & Replayのリリース発表後、海外テックコミュニティでの反応は大きく分かれました。
ポジティブな評価
- 「ノーコードのRPA」という切り口で、特に非エンジニアからの反応が大きかった
- 「一度見せるだけで覚える」という直感的な体験が好評
- チームでのスキル共有という発想が、企業ユースとして注目された
懐疑的な意見
- Computer Useの精度が実用レベルに達していない業務では失敗する
- macOSのみの対応で、Windowsユーザーが多い企業では使えない
- 機密情報を扱う業務では、画面をAIに見せることへの懸念がある
海外のユースケース紹介
英語圏のProduct Managerコミュニティでは「月末のKPIレポート集計」に使うレポートが増えています。複数のSaaSツールからデータを集めてスプレッドシートに入力する作業が、代表的なユースケースです。
テックメディアTechTimesは「Show It Once, Skip the Script(一度見せれば、スクリプトは不要)」というキャッチコピーで紹介しました。これがRecord & Replayのコンセプトを最もよく表しています。
Record & Replayを使うべき業務・使わない方がいい業務
向いている業務
繰り返し頻度が高い定型業務
週次・月次で同じ手順を踏む作業ほど効果が大きくなります。1回の録画コストを、繰り返し回数で割った結果が「効率化の実感」です。月に1回しか発生しない作業より、毎週発生する作業の方が投資対効果が高いです。
複数アプリをまたぐ作業
「ツールAでデータ確認→ツールBに入力→ツールCに通知」という横断的な作業は、Record & Replayが得意です。この種の作業はスクリプトを書けば自動化できますが、コーディングスキルが必要です。Record & Replayなら録画するだけで済みます。
「難しくはないが面倒な」作業
スキルが不要で、誰でもできるが手間がかかる作業が最適です。経費精算、申請フォームへの入力、定期レポートのダウンロードなどが典型です。
向いていない業務
毎回判断が変わる業務
毎回判断軸が変わる業務は、現時点のRecord & Replayでは対応が難しいです。LLMが意図を解釈するとはいえ、複雑な判断は事前にSKILL.mdに書き込む必要があります。
画面のレイアウトが頻繁に変わるサービス
定期的にUIが更新されるSaaSを対象にする場合、スキルが古くなって動かなくなるリスクがあります。更新のたびに録画し直すコストを考慮する必要があります。
機密情報を多く扱う作業
録画中はAIが画面全体を見ます。個人情報、パスワード、財務情報が含まれる作業は、セキュリティポリシーと照らし合わせて判断してください。
リアルタイムの速さが必要な作業
Computer Useは処理に時間がかかります。1秒以内の反応が求められるような操作や、動的に変化し続ける画面への対応は苦手です。
Record & Replayのメリット・デメリット
メリット
1. プロンプトもコードも書かずに自動化できる
「Codexに指示を書いて自動化する」ことすら不要です。やって見せるだけで済みます。テクニカルな知識が不要なため、非エンジニアの業務自動化に向いています。
2. スキルを言語で管理できる
保存されるSKILL.mdは人間が読めるドキュメントです。確認・修正・追記ができます。ブラックボックスにならないため、後から誰でも内容を把握して修正できます。
3. チームで共有・再利用できる
1人が録画したスキルをファイル共有するだけで、部署全員が使えます。「ベテランの暗黙知をスキルとして継承する」という使い方が可能です。
デメリット・注意点
1. macOSのみ対応
現時点でWindowsには対応していません。Windowsがメインの職場では使えません。
2. Computer Useの精度に依存する
実行時の精度はComputer Useに依存します。画面のレイアウトが複雑だったり、動作が速すぎたりする場合は失敗することがあります。重要な業務で使う前に十分なテストが必要です。
3. 機密情報の扱いに注意が必要
録画中はAIが画面を見ています。パスワードや個人情報が含まれる操作を録画する際は、公式のプライバシーポリシーを確認したうえで判断してください。
4. 1セッション30分の制限
1回の録画は最大30分です。それ以上かかる業務は分割して録画する必要があります。
Record & Replayを使い始めるためのステップ
今すぐ始める手順
Record & Replayを使うために必要なことをまとめます。
STEP 1:Codexアプリをインストールする
公式サイト(openai.com)からmacOS用のCodexアプリをダウンロードします。
STEP 2:有料プランを契約する
Record & ReplayはPlus($20/月)以上のプランが必要です。ChatGPT PlusはCodexのPlusと同一プランです。すでにChatGPT Plusに加入している場合は、追加料金なしで使えます。
STEP 3:Computer Useを有効にする
Codexアプリの設定画面でComputer Useをオンにします。macOSのシステム設定でCodexにアクセシビリティ権限を付与します。
STEP 4:最初のスキルを録画する
最初に試す業務は「毎月繰り返している最も単純な手順」が向いています。複雑な業務からではなく、シンプルな作業で精度を確認してから活用範囲を広げていくのがおすすめです。
最初に録画するのに向いている業務
初めてRecord & Replayを試す場合は、以下の条件を満たす業務から始めることをおすすめします。
- 手順が5〜10ステップ程度で完結する
- 毎回同じサービス・同じ画面を使う
- 失敗しても影響が少ない(申請ではなく確認作業など)
- 自分だけが使う(いきなりチーム展開しない)
具体例は以下のとおりです。
- 特定のサイトにログインしてレポートをダウンロードして保存する
- アナリティクスの週次数値を確認してスプレッドシートに記録する
最初はチーム展開より、自分の小さな作業で精度を体験するのが近道です。
よくある質問(FAQ)
Q. Record & ReplayはWindowsでも使えますか?
A. 現時点(2026年6月)では使えません。macOSのみの対応です。Windowsへの対応時期は公式からアナウンスされていません。
Q. 無料プランでも使えますか?
A. 使えません。Record & ReplayはPlus($20/月)以上の有料プランが必要です。
Q. Computer Useを有効にするには何が必要ですか?
A. CodexアプリのSettings内でComputer Useをオンにする必要があります。またmacOS側でCodexにアクセシビリティ権限を付与する設定も必要です。
Q. 録画したスキルはどこに保存されますか?
A. SKILL.mdというMarkdownファイルとしてローカルに保存されます。内容を確認・編集できます。
Q. 録画失敗した場合はどうなりますか?
A. 録画をやり直せます。また、生成されたSKILL.mdが意図と違う場合は、ファイルを直接編集して修正することも可能です。
Q. EEA(EU)・イギリス・スイスでは使えないのはなぜですか?
A. Computer Useが、GDPR等の規制対応の観点から現時点でこれらの地域では提供されていないためです。Record & ReplayはComputer Useを使うため、同様の制限があります。
まとめ
Codex Record & Replayは「一度見せれば、次から自分でやらなくていい」を実現するツールです。
- Mac上の操作を録画するだけでAIがスキルとして保存・再実行できる
- SKILL.mdに手順が言語化されるためチームへの共有・継承が可能
- 座標ベースのマクロと違い、LLMが意図を解釈して環境変化に対応できる
- 実行時はComputer Useが動作し、AIがMacを代わりに操作する
- 現時点ではmacOSのみ、Plus($20/月)以上が必要
まず試すなら、毎月繰り返している最も単純な作業を選ぶのが近道です。録画して精度を確かめてから、チームへの展開・重要業務への適用と段階的に広げていくのをおすすめします。
▼ Codex公式サイトでRecord & Replayを確認する
https://openai.com/codex/